整骨院の開業資金は、自己資金だけでまかなうケースは多くありません。多くの先生方が、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」をはじめとした創業融資を活用して開業されています。無担保・無保証人で利用できる制度もあり、開業間もない事業者でも申し込みやすいのが特徴です。とはいえ、審査に通るかどうかは、創業計画書の作り込み次第で大きく変わります。今回は、300院以上の開業をサポートしてきた実績をもとに、審査で見られる3つのポイントと、創業計画書づくりのコツ、よくある失敗パターンをご紹介します。

整骨院の開業で使える資金調達の選択肢

整骨院の開業でよく活用される資金調達の方法には、日本政策金融公庫の新創業融資制度、信用保証協会を利用した制度融資、自己資金、親族からの借入などがあります。中でも日本政策金融公庫の新創業融資制度は、税務申告を2期終えていない開業間もない事業者でも申し込みやすく、無担保・無保証人で利用できることから、整骨院の開業資金として最も多く活用されている選択肢です。開業資金全体の考え方については「整骨院の開業資金はいくら必要?」でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

日本政策金融公庫と信用保証協会の制度融資、何が違うのか

整骨院の開業資金でよく比較検討されるのが、日本政策金融公庫の新創業融資制度と、信用保証協会を利用した制度融資(自治体の制度融資)です。日本政策金融公庫は国の政策金融機関で、比較的スピーディーに審査が進みやすく、開業前でも申し込みやすいのが特徴です。一方、信用保証協会の制度融資は、自治体・金融機関・信用保証協会の3者が関わる仕組みで、自治体によっては利子補給などの優遇制度が設けられていることもあります。審査のスピードや必要書類、金利の水準が制度ごとに異なるため、開業のスケジュールや資金使途にあわせて、どちらか一方、あるいは両方を組み合わせて活用するかを検討するとよいでしょう。

ポイント1:経歴のアピール

施術者としての経験年数や保有資格、これまでの勤務先での実績は、審査における重要な判断材料になります。特に、勤務先でどのような役割を担っていたか(施術だけでなく、受付管理やスタッフ指導、売上管理などの経験があるか)は、「経営者としてやっていけるか」を判断する材料として重視されます。「この方であれば経営を任せても大丈夫」と金融機関に感じてもらえるよう、これまでのキャリアを丁寧に棚卸しし、創業計画書にしっかりと反映させることが大切です。勤務先の名称や在籍期間だけでなく、担当していた患者数や、店舗運営に関与した経験、資格取得の経緯なども具体的に書き出しておくと、面談時の受け答えにも一貫性が生まれます。

ポイント2:院の特徴・戦略の明確化

どのような治療院を目指すのか、どの患者層をメインターゲットにするのか、近隣の競合とどう差別化するのか。これらが明確に言語化できているかどうかも、審査で見られるポイントです。「なんとなく開業したい」ではなく、「駅前で忙しく働く30〜40代の女性をターゲットに、産後の骨盤矯正に強みを持つ院として展開する」といった具体性のある戦略として説明できる状態を整えておきましょう。競合となりうる周辺の治療院を実際に調べ、価格帯やメニュー、口コミなどを比較しておくと、説得力のある差別化ポイントが見えてきます。あわせて、開業後にどのような集客手段(ホームページ、SNS、地域チラシなど)を使い、新規患者をどう獲得していくのかまで具体的に示せると、計画全体の完成度が一段と高まります。

ポイント3:現実的な売上予想

開業への意気込みから、つい強気な売上予想を立ててしまいがちですが、根拠のない楽観的な数字はかえって信頼を損ねてしまいます。客単価×客数×稼働率といった要素から、実態に即した無理のない売上予想を積み上げることが重要です。例えば、客単価5,000円、1日の施術可能人数15人、稼働率を開業初月は40%、半年後に70%まで段階的に伸ばしていく、といったように、時間の経過にあわせて数字が右肩上がりに変化していく現実的なシナリオを描くことがポイントです。初月から満席稼働を前提にした予想は、審査担当者から見ると「地に足がついていない」と判断されやすい典型例です。あわせて、リピート率や新規患者の獲得ペースなど、開業後にどう売上を伸ばしていくのかという道筋を示すことで、単なる数字の羅列ではなく、実現可能性の高い計画として評価されやすくなります。

創業計画書は「数字の裏付け」がすべて

経歴・戦略・売上予想のいずれも、最終的には創業計画書という書類に落とし込む必要があります。感覚的な言葉ではなく、数字の裏付けをもった計画書に仕上げることで、金融機関からの信頼を得やすくなります。創業計画書の書き方そのものについては「治療院開業時の事業計画書の作り方」でも詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。

融資額の目安と自己資金の関係

新創業融資制度は無担保・無保証人で利用できる一方、自己資金の状況も審査で確認される項目のひとつです。自己資金をコツコツ貯めてきた実績が通帳などで確認できると、計画性の面で評価されやすくなります。自己資金の考え方については「開業資金の自己資金はどれくらい必要?」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

目安として、開業資金総額の1割〜3割程度の自己資金を準備できていると、審査が進みやすい傾向にあります。自己資金が少ない場合でも、事業計画の内容や経歴でカバーできることもあるため、「自己資金が足りないから諦める」と早合点せず、まずは相談してみることをおすすめします。また、日本政策金融公庫の融資額は、自己資金の額そのものよりも「事業計画全体の実現可能性」で判断されるため、自己資金が目安を下回っていても、経歴や計画の説得力次第で希望額に近い融資が受けられるケースも少なくありません。

面談で聞かれることの多い質問

創業計画書を提出した後、多くの場合、日本政策金融公庫の担当者との面談が行われます。面談では、計画書に書いた内容について、次のような質問がよく聞かれます。

面談は、計画書の内容を暗記して答える場ではなく、自分の言葉で事業への理解と熱意を伝える場です。想定問答を事前に準備しておくと、当日落ち着いて対応できます。担当者は、書類の内容と実際の受け答えに矛盾がないかを重視しているため、計画書に書いた数字の根拠は、聞かれたらすぐに説明できるよう頭の中で整理しておくことが大切です。服装や身だしなみも、経営者としての信頼感を伝える一要素として意識しておくとよいでしょう。

審査でよくある失敗パターン

①自己資金の準備不足で融資額が伸びない
自己資金が少なすぎると、希望額の融資を受けられないことがあります。開業を考え始めた時点から、逆算して自己資金を積み立てる計画を立てることが大切です。

②売上予想が楽観的すぎる
「開業すればすぐに満席になる」という前提の計画書は、審査担当者からの信頼を得にくくなります。客単価・客数・稼働率の根拠を、地域の相場や自身の経験に基づいて具体的に説明できるようにしておきましょう。

③直前になって親族から借りたお金を自己資金として計上する
コツコツ貯めてきた実績が確認できない資金は、自己資金として評価されにくい傾向があります。自己資金は、開業を意識した時点から計画的に準備しておくことが重要です。

よくある質問

Q開業資金の融資は、開業前と開業後、どちらのタイミングで申し込むべきですか?
物件契約前後のタイミングで申し込むのが一般的です。新創業融資制度は開業前でも申し込めますが、実際の資金実行は物件契約や内装工事の見積もりが固まった段階になることが多いため、開業予定の3〜4か月前を目安に準備を始めることをおすすめします。準備期間が短いと、創業計画書の作り込みが不十分なまま面談に臨むことになり、審査結果にも影響しかねません。
Q他の借入(奨学金や車のローンなど)があると、審査に影響しますか?
既存の借入があること自体が即座に不利になるわけではありませんが、返済負担率(収入に対する返済額の割合)は審査の判断材料になります。既存の借入状況も含めて、無理のない返済計画を創業計画書に示すことが大切です。
Q一度審査に落ちた場合、再申請はできますか?
制度上は再申請が可能ですが、一定期間を空ける必要があり、前回の申請から計画内容が改善されていなければ、再度落ちてしまう可能性が高くなります。落ちた理由を分析し、計画書の内容や自己資金の状況を見直したうえで再申請することをおすすめします。
Q創業計画書は自分で作成できますか、それとも専門家に依頼すべきですか?
自分で作成すること自体は可能ですが、金融機関がどのような点を重視しているかを知らないまま作成すると、内容が主観的になりがちです。特に売上予想の根拠や資金使途の妥当性は、数字に強い専門家のサポートを受けることで説得力が大きく変わるため、税理士に相談しながら作成することをおすすめします。

創業融資の審査は、経歴・戦略・売上予想という3つのポイントがそれぞれ独立しているのではなく、創業計画書全体として一貫したストーリーになっているかどうかが最終的に問われます。アトラス会計では、開業資金のシミュレーションから創業計画書の作成サポート、金融機関との面談対策まで、一連の流れを伴走してサポートしています。「まだ開業するか迷っている」という段階からでもお気軽にご相談ください。

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