治療院経営における固定費の中でも大きな割合を占めるのが家賃です。テナント専用物件か、自宅の一部を施術スペースにしているかによって、経費にできる範囲が大きく変わってきます。特に自宅兼治療院のケースは、按分の考え方を誤ると税務調査で指摘を受けやすいポイントでもあります。家賃を経費にする際の基本的な考え方を、順を追って見ていきましょう。
テナント契約の場合
治療院専用のテナントを借りている場合、支払う家賃は全額を経費として計上できます。あわせて、共益費や管理費、駐車場代なども経費にできます。事業専用の物件であれば、按分の手間がなくシンプルに処理できるのがメリットです。ただし、物件によっては契約書上「居住用」となっているケースもあり、事業利用が認められているかどうかを事前に大家さんや管理会社に確認しておく必要があります。
敷金・礼金の扱い
契約時に支払う敷金は、退去時に返還されることが前提のため、原則として経費にはならず、資産(保証金)として計上します。一方、礼金は返還されない性質のものであるため、金額によっては一定期間(通常5年、契約期間がそれより短い場合はその期間)で償却する形で経費にします。礼金が20万円未満の場合は、支払った年に一括で経費にできる取り扱いもあるため、金額に応じて処理方法が変わる点を覚えておきましょう。
自宅兼治療院の場合、按分計算が必要
自宅の一部を施術スペースとして使用している場合は、家賃全額ではなく、事業で使用している割合に応じた按分計算が必要になります。面積や使用時間をもとに合理的な割合を算出します。
按分の代表的な方法は「床面積按分」です。例えば、自宅の総床面積が80㎡で、施術スペースが20㎡であれば、家賃の25%(20÷80)を事業按分分として経費にできます。時間按分(1日のうち施術に使う時間の割合)を組み合わせて、より実態に即した割合を算出することもあります。按分割合の根拠は、間取り図に施術スペースを明示したメモや、実際の写真などを残しておくと、税務調査の際にも説明がしやすくなります。
持ち家の場合の考え方
賃貸ではなく持ち家で自宅兼治療院を営んでいる場合、家賃そのものは発生しませんが、住宅ローンの利息、固定資産税、火災保険料、建物の減価償却費などを、同様の按分計算で経費にすることができます。住宅ローンの元本部分は経費にできない点に注意が必要です。
水道光熱費も按分の対象になる
家賃だけでなく、電気代・水道代・ガス代といった水道光熱費も、自宅兼治療院の場合は事業按分の対象になります。施術で使用する電気治療器の消費電力や、タオルの洗濯にかかる水道代など、実態に応じた割合で按分するのが基本的な考え方です。厳密な計測が難しい場合は、家賃と同様の面積按分を援用するケースが一般的です。家賃と同じ按分割合を使う税理士事務所も多いですが、実態に差がある場合は別の割合を設定することもあります。
更新料・原状回復費用
契約更新時に発生する更新料も経費にできます。更新料の金額や償却の考え方は礼金と同様に扱われることが一般的です。自宅兼治療院の場合は、更新料も家賃と同様の割合で按分するのが一般的です。退去時の原状回復費用も、事業のために発生した費用として経費計上が可能です。分院展開や移転で複数の物件を経験する治療院では、これらの費用も無視できない金額になることがあります。
ホームページ制作費など他の固定費との考え方の違い
家賃のような「按分が必要な経費」と、施術メニューの広告費のような「事業目的が明確な経費」では、経理上の扱いが異なります。ホームページ制作費の経費計上については「ホームページ制作費は経費?」もあわせてご覧ください。
よくある質問
Q按分割合は毎年見直す必要がありますか?
Q賃貸ではなく持ち家の場合、家賃相当額を経費にできますか?
家賃は毎月継続して発生する費用だからこそ、正しく経費計上できているかどうかで、年間を通した税負担にも大きく影響します。契約内容に応じた経理処理に迷ったら、治療院専門の税理士に確認しておきましょう。開業前の物件契約段階から相談いただくと、按分方針も含めてスムーズに準備できます。