「利益は出ているはずなのに、口座の残高が心もとない」という状況は、多くの治療院経営者が一度は経験することです。試算表上は黒字なのに資金が足りなくなる背景には、治療院特有の入金サイクルが関係していることが少なくありません。資金繰りを改善するための具体的なポイントをご紹介します。

資金繰り表を作成する

資金繰り改善の第一歩は、現状を「見える化」することです。毎月の入金・出金を一覧にした資金繰り表を作成すれば、数か月先の資金が不足しそうなタイミングを事前に把握できます。試算表(損益)だけを見ていても、いつお金が足りなくなるかは分かりません。資金繰り表は、通帳の動きを未来に向けて予測する表だと考えるとイメージしやすいはずです。

保険診療と自費診療で入金サイクルが違う

区分
入金までの目安
資金繰りへの影響
自費診療
施術当日(現金・カード即時入金)
資金繰りは安定しやすい
保険診療(療養費)
施術月の翌々月が目安
2か月分のタイムラグを見込む必要

治療院特有のポイントとして、保険診療分の入金は請求してから振り込まれるまでに、施術月の翌々月になるのが一般的です。開業したばかりの月は、この2か月分のタイムラグの影響で、保険診療の患者が多いほど「施術はしているのにお金が入ってこない」状態が続きます。このタイムラグを踏まえた資金繰りができていないと、試算表上は利益が出ていても、手元資金が不足する状態に陥りやすくなります。開業時の運転資金は、この入金サイクルを見込んで、最低でも2〜3か月分の固定費をまかなえる金額を確保しておくことをおすすめしています。

固定費を定期的に見直す

家賃、リース料、サブスクリプション型のサービス利用料など、固定費は一度契約すると見直されにくい傾向があります。特に医療機器のリース契約は、複数年にわたって毎月の支払いが固定されるため、資金繰りを圧迫しやすい費目です。リースと現金購入のどちらが自院の資金繰りに合っているか、契約前に比較しておくことも重要です。定期的に契約内容を棚卸しし、不要な支出がないか確認する習慣をつけましょう。

納税資金を計画的に確保する

所得税や消費税など、まとまった金額の納税が発生するタイミングを把握し、日頃から納税用の資金を別枠で確保しておくことで、納税時期の資金ショックを防げます。特にインボイス登録後、初めて消費税を納める年は、想定より大きな金額になって驚かれる先生が多いため、納税用の口座を分けて積み立てておくと安心です。

季節変動を織り込んでおく

治療院の来院数は、天候や季節によって波があります。閑散期に資金が薄くなることを見越して、繁忙期のうちに一定の資金を確保しておく、あるいは季節性を踏まえた資金繰り表を作成しておくことで、毎年同じタイミングで資金が不安になるという事態を避けられます。

早めの資金調達も選択肢に

資金が本当に厳しくなってから金融機関に相談すると、対応の選択肢が限られてしまいます。余裕のあるうちに、追加融資などの選択肢を検討しておくことも、資金繰り改善の一環です。

よくある質問

Q資金繰り表は自分で作れますか?
エクセルなどで自作することも可能ですが、保険診療の入金タイムラグや納税のタイミングなど、治療院特有の要素を織り込むには一定の知識が必要です。当事務所では、毎月の試算表とあわせて資金繰り表のひな形を提供し、一緒に更新していくサポートを行っています。
Q開業直後、保険診療の入金がまだない時期はどう乗り切ればよいですか?
開業融資を検討する際に、この2か月分のタイムラグを見込んだ運転資金を借入額に含めておくことが有効です。すでに開業していて資金が厳しい場合は、早めに追加融資や当座貸越の相談をすることをおすすめします。
Q分院を増やすと資金繰りはどう変わりますか?
分院ごとに保険診療の入金タイムラグが発生するため、院数が増えるほど資金繰り全体の管理が複雑になります。本院・分院をまとめた資金繰り表で、グループ全体の資金の流れを把握することが欠かせません。

資金繰りの改善は、日々の数字の見える化と、治療院特有の入金サイクルを理解することから始まります。治療院専門の税理士とともに、資金繰り表を作成し、早め早めの対策を心がけましょう。

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