「これは経費になるのだろうか」と迷いながら領収書を仕分けている先生は少なくありません。経費として計上できる範囲を正しく理解しているかどうかで、年間の税負担は大きく変わります。今回は、治療院経営で経費として計上できる代表的な費用を、カテゴリごとに一覧で整理してご紹介します。開業したばかりの先生はもちろん、経理を見直したいという先生にも参考にしていただける内容です。

経費になるかどうかの基本的な考え方

経費として認められるかどうかは、「事業を行うために直接必要な支出かどうか」が基本的な判断基準です。税法上、明確に「これは経費、これは経費でない」というリストが存在するわけではなく、実態として事業との関連性を説明できるかどうかがポイントになります。プライベートの支出と事業の支出が混在している場合は、事業で使用している割合に応じて按分して計上します(家事按分)。

例えば、自宅兼治療院で家賃10万円、施術スペースが住居全体の3割を占めている場合、家賃のうち3万円を経費として計上する、というのが家事按分の考え方です。面積按分のほか、使用時間の割合で按分する方法もあり、費目の性質に応じて合理的な基準を選びます。按分の根拠は、税務調査でも確認されやすいポイントのため、間取り図や使用時間の記録を残しておくと安心です。

施術・設備に関する費用

費目内容の例
施術ベッド・治療機器電気治療器、干渉波・低周波治療器など(高額なものは減価償却)
消耗品費タオル、テーピング、包帯、アルコール消毒液などの衛生材料
ユニフォーム代施術用の白衣・ポロシャツなど
クリーニング代タオル・ユニフォームのクリーニング費用

施術ベッドや高額な治療機器は、10万円以上の場合は原則として減価償却が必要です。一方、消耗品として使うタオルやテーピングなどは、購入した年に全額を経費として計上できます。減価償却が必要な資産と、その場で経費にできる消耗品を区別しておくことがポイントです。なお、青色申告をしている場合、30万円未満の設備投資については、年間合計300万円を上限に、購入した年に全額を経費にできる「少額減価償却資産の特例」を使えます。新しい治療機器を導入するタイミングでは、この特例を活用できるかどうかも確認しておきましょう。

店舗運営に関する費用

費目内容の例
地代家賃テナント家賃、駐車場代
水道光熱費電気代、水道代、ガス代
通信費電話代、インターネット回線費用
修繕費店舗設備の修理・メンテナンス費用
リース料複合機、レジ、治療機器のリース料

自宅兼治療院の場合、家賃や水道光熱費は事業で使用している割合(面積や使用時間の割合)に応じて按分計上します。按分の根拠(間取り図や使用時間の記録など)を残しておくと、税務調査でも説明しやすくなります。

人件費・外注費

費目内容の例
給与賃金スタッフへの給与・賞与
専従者給与青色事業専従者給与の届出をした家族への給与
外注工賃業務委託契約の施術者への報酬
法定福利費社会保険料の事業主負担分
福利厚生費健康診断費用、忘年会費用など全スタッフ対象の支出

家族への給与は、個人事業の場合、青色事業専従者給与に関する届出書を提出していないと経費にできません。実際の労働実態に見合った金額であることも重要な条件です。

広告・集客に関する費用

費目内容の例
広告宣伝費ホームページ制作費、Web広告費、チラシ・看板制作費
支払手数料ポータルサイトへの掲載料、予約システム利用料
販売促進費オープニングキャンペーン、紹介キャンペーンの費用

研修・教育に関する費用

費目内容の例
研修費技術セミナー、経営セミナーの参加費
新聞図書費専門書籍、業界誌の購入費
旅費交通費研修参加のための交通費・宿泊費

業務に必要な資格取得のための講座費用や受験料も、事業との関連性が認められれば経費計上できます。ただし、事業と関連のない趣味的な資格取得費用は対象外です。

車両・交際費に関する費用

往診や物品の買い出しで使用する車の購入費(減価償却費)、ガソリン代、車検・整備費用、保険料なども経費にできます。プライベートと兼用している場合は、走行距離の記録や使用実態をもとに、事業利用の割合に応じた按分が必要です。取引先との会食や、業界の情報交換を目的とした飲食費は、交際費として経費計上できますが、誰と何の目的で使ったのかを領収書の裏などにメモしておくと、後から説明がしやすくなります。

治療院経営における経費率の目安

経費の項目を理解したうえで、次に気になるのが「どのくらいの割合まで経費をかけてよいのか」という点です。一般的な治療院経営における費用構造の目安は、次のようになります。

費目売上に対する目安
人件費率20%〜35%程度
家賃比率10%前後
広告費率10%程度
その他経費(消耗品・水道光熱費等)10%〜15%程度

これらはあくまで目安ですが、特定の費目だけが突出して高い場合は、そこに改善の余地がある可能性が高いといえます。経費を単に「使う・使わない」で判断するのではなく、売上に対する適正な水準を意識しながら管理することが、利益を残す経営につながります。毎月の試算表でこれらの比率を確認する習慣をつけておくと、数字の変化にも早く気づけるようになります。

領収書・レシートの管理方法

経費を正しく計上するには、日々の領収書やレシートの管理が欠かせません。紙のまま溜め込んでしまうと、確定申告の時期に慌てて整理することになりがちです。月ごとに封筒やファイルで分けておく、スマートフォンで撮影してクラウド会計に取り込むなど、無理のない仕組みを作っておくと安心です。青色申告の場合、領収書などの証憑書類は原則として7年間の保存が必要になるため、年ごとにまとめて保管しておく習慣をつけましょう。

経費にならないものの例

次のような支出は、事業との関連性が認められにくく、経費として否認されるリスクが高い項目です。

「経費として計上できれば税金が減るから、できるだけ多く計上したい」と考える先生もいますが、事業との関連性を説明できない支出を無理に経費にすると、税務調査で否認されるだけでなく、悪質と判断された場合には重加算税の対象になることもあります。正しい範囲で漏れなく計上することが、結果的に最も安全で効果的な節税につながります。

よくある質問

Q10万円未満の備品はどう処理すればよいですか?
取得価額が10万円未満の備品は、購入した年に全額を消耗品費として経費計上できます。10万円以上20万円未満であれば、3年間で均等に償却する一括償却資産として処理する方法もあります。
Q領収書がない支出は経費にできませんか?
自動販売機での購入や慶弔費など、領収書が発行されない支出については、支払日・金額・目的をメモした出金伝票を作成しておくことで、経費として計上できます。日付・金額・支払先・内容を記録しておくことが基本です。
Q経費にできるか迷ったときはどうすればよいですか?
判断に迷う支出は、その場で結論を出そうとせず、レシートや領収書を保管したうえで、顧問税理士にまとめて確認するのがおすすめです。事業との関連性を説明できるよう、購入目的をメモしておく習慣をつけると、後からの判断もスムーズになります。

経費になるかどうかの判断は、「事業のために使ったお金かどうか」が基本的な考え方です。迷う支出があれば、その都度まとめておき、治療院専門の税理士に確認するとよいでしょう。日頃から正しく経費を計上できているかどうかは、年間の税負担だけでなく、税務調査への備えにもつながります。「これは経費にできるのだろうか」と迷う支出が多い先生ほど、月次で試算表を確認しながら伴走してくれる税理士のサポートを受けることで、経費の判断に振り回されず、施術に集中できる環境を整えられます。

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